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ツールと比較 · 2026-10-10 · 12分
IFCモデルの内水氾濫シミュレーションをブラウザーで:設定ガイド
集中豪雨のとき、水はどこへ流れ、ドアまで届くのか。ジオリファレンスされたIFCと、その下の地形、周囲の道路があれば、ブラウザー上で1分もかからずに最初の答えが得られます。その答えに意味を持たせるためのシミュレーションの設定方法と、結果の読み方を解説します。
IFC Viewer Onlineの浸水シミュレーション:バルセロネータの3Dマップ上に置いたホテルW BarcelonaのIFC。周囲に極端な豪雨による最大浸水深が青で表示されている
「2時間で120mm降ったら、水はどこへ流れ、ドアまで届くのか?」この問いは、デザインレビューでも、計画段階の協議でも、近くの道路が豪雨で冠水するたびにも出てきます。たいていの答えは水理コンサルタントへの依頼か、プロジェクトのずっと後になるまで答えが出ないかのどちらかです。
ジオリファレンスされたIFCには、最初の答えに必要な情報の大半がすでに含まれています。建物の位置、フットプリント、そして1階です。そこに足元の地形と周囲の道路を加えれば、2次元の内水氾濫シミュレーションで、地表水がどこを流れてどこに溜まり、どれほどの深さと速さになるかを、ブラウザー上で数秒のうちに示せます。結果はあくまで参考値で、認定された解析ではありません。このガイドでは、その参考値に意味を持たせるための設定方法を説明します。
この記事のポイント
- 浸水シミュレーションの質は地形データで決まります。マップの起伏かDEMを使い、数値を信用する前に「シミュレーションが認識している内容」のレポートを読みましょう。
- セルサイズはスケールの問題です。ドアや縁石なら1m、街区なら2m、地区なら5mです。
- OpenStreetMapの周辺環境はオンのままにします。舗装された道路、雨を吸収する公園、塀、隣の建物、そして消えた川のすべてが、水の行き先を変えます。
- 結果は最大浸水深、流速、到達時間と、隣接する水位より低いドア、スペース、設備の一覧です。GIS用にGeoTIFFでエクスポートできます。
- 答えられるのは「地表水はどこに溜まるか?」であり、「基準に適合しているか?」ではありません。下水道網は含まれず、河川の増水もまだ入力できません。
試してみる:Hotel Velaに極端な豪雨
ホテルW BarcelonaのIFCを、カタルーニャ地図地質研究所(ICGC)の地形とOpenStreetMapの周辺環境とともに読み込み、2時間で120mmの雨をグラフィックカード上で降らせます。マップはプロバイダーに接続する前に同意を求めます。

インタラクティブなIFCビューアーを開く
シミュレーションできること、できないこと
モデルとその周辺に敷いた規則格子のすべてのセルに雨が降ります。水は局所慣性形式の2次元浅水方程式[bates2010]に従って移動し、フラックスにはde Almeidaらの重み付け[dealmeida2012]を用います。水は低いほうへ流れ、くぼ地に溜まり、壁を回り込み、許可すれば境界から流れ出ます。屋根に降った雨は建物の足元の道路に渡され、地面は土壌と被覆に応じて雨を吸収します。
計算はすべてグラフィックカード上で、WebGPU、それが使えない環境ではWebGL2で実行されます。GPUの結果はCPUの参照実装と照合しており、タイムステップ数は同じ、水量は小数点以下6桁まで一致します。水の体積は毎ステップで収支を取り、パネルには質量収支誤差が表示されます。通常は100万分の1程度です。
シミュレーションしないもの:
- 下水道網。雨水桝や管路はモデル化していません。屋根の雨水は「下水道へ排水」に設定でき、建物に囲まれた中庭は排水されるものとして扱いますが、道路上の水は道路上にとどまります。
- 河川と海。入力は雨だけです。河川の増水や高潮は、まだ入力できません。
- 開口部としてのドアや窓。建物は中まで詰まった塊として扱います。シミュレーションが報告するのは各要素の外側に溜まる水であり、水が中に入るかどうかではありません。
- 風、波、土砂、漂流物。
設定手順
- ジオリファレンスされたモデルを開く IFCをビューアーにドラッグします。位置情報(IfcMapConversion)が記述されていれば、地形と道路は正しい場所から読み込まれます。記述がなければ、先にマップ上で手動で配置してください。
統合モデルの場合は、意匠モデルと一緒に構造モデルも読み込みます。スラブや地下壁のない意匠モデルは1階が浮いているものと読み取られ、水がその下を流れてしまうとパネルが警告します。
- 起伏表示ありでマップをオンにする 「マップ → Show on map → Terrain」で起伏を表示します。初回は、プロバイダーに接続するための同意をマップが求めます。カタルーニャでは起伏はICGCの5mの地盤面モデル、それ以外の地域では約30mの全球モザイクです。
30mの起伏では、縁石や掘り下げた車路は表現されません。実際の敷地では、パネルでDEM(.ascまたはGeoTIFF)をインポートしてください。
- 浸水シミュレーションを開く ツールレールから、または「ツール → 浸水」で開きます。
- グリッドを選ぶ セルは1m、2m、5mのいずれかです。モデル周囲の余白も指定します(既定は60m)。
- 地形と建物を確認する 「マップの起伏を使用」「マップの建物を障害物として扱う」「OpenStreetMap の周辺環境」はオンのままにします。屋根は道路へ排水する設定にします。竪樋が下水道につながっているとわかっている場合は別です。
- 降雨を選ぶ 30分で10mmから2時間で120mmまでの4つのプリセットから選ぶか、「編集」で5分刻みの降雨を自分で描きます。続いて、雨がやんだ後にどれだけ計算を続けるかを設定します。
- 地表面と土壌を設定する 粗度は舗装から密な植生まで、土壌は不浸透から砂質土まで選べます。OpenStreetMapの周辺環境がオンなら、道路、公園、林はセルごとに固有の値を設定します。
- 境界を選ぶ 「水が流出」では、水が範囲の外へ流れ出ます。「閉鎖」では一滴残らず範囲内にとどまります。最悪のケースであり、出口のない盆地に適した設定です。
- グリッドを生成し、認識内容を読む 「グリッドを生成」を押し、何かを実行する前にレポートを確認します(次のセクション)。
- シミュレーションを実行する 100 × 100セルのグリッドで2時間の豪雨なら、内蔵グラフィックスでも数秒で終わります。
パネルは上から下へ、決めていく順に並んでいます。この例では1mのセル、マップの起伏、OpenStreetMapの周辺環境、極端な豪雨のプリセット、閉鎖境界です。
結果を左右する設定
| 設定 | 選択肢 | 効いてくる場面 |
|---|
| セル | 1 · 2 · 5m | 流れを変える最小の要素が、少なくとも1セル分の幅を持つ必要があります。5mのセルでは、15cmの縁石は存在しないのと同じです。セルを半分にすると、セル数は4倍になります。 |
| 地形 | IFCの地形 › DEM › マップの起伏 › 補完 › 平面 | 最初にデータを返したソースが使われます。デモ用の平面は仮の地面にすぎず、その上の結果は敷地についてほとんど何も語りません。 |
| 地盤を1階に合わせる | オン · オフ | IFCに記述された高さと地形が0.5mを超えてずれているとき。オフにすると、地盤から2m浮いたモデルは決して濡れず、埋まったモデルは最初から浸水します。 |
| OpenStreetMapの周辺環境 | オン · オフ | 道路は不浸透、公園は雨を吸収し、塀や隣の建物は水をせき止め、旧河道は表示されます。オフにすると、モデルの外側はすべて一様な地表面になります。 |
| 屋根 | 道路へ排水 · 下水道へ排水 | 大きな屋根の雨は、建物の足元に落ちます。竪樋が下水道につながっていれば、道路には一切流れません。 |
| 降雨 | プリセット · 手描き | 総雨量とピークの両方が重要です。45分で60mmならピークは160mm/h、2時間で120mmならピークは120mm/hです。 |
| 土壌 | 不浸透 · 締め固められた土 · ローム · 砂質土 | Hortonの浸透式:最初は速く、土が湿るにつれて遅くなります。砂質土は最初125mm/h、後に25mm/h、締め固められた土は25、その後3です。 |
| 境界 | 水が流出 · 閉鎖 | 閉鎖は最悪のケースです。一滴も外に出ず、水は最も低い境界に沿って溜まります。 |
信頼度の高い順に3つのソースを重ね、ソルバー用の1つのグリッドを作ります。
信用する前に:シミュレーションが認識している内容
「グリッドを生成」の後、パネルにはグリッドに取り込まれた内容が一覧表示されます。このレポートを2分読むだけで、誤った結論に半日を費やさずに済みます。
バルセロナのTorre Poblenou:ICGCの5m起伏、OpenStreetMapから取得した道路93本、旧水路・暗渠3本、建物36棟。モデルは周囲の地盤より1.8m高く記述されていたため、地盤をその1階に合わせました。
- 地形:「マップの起伏」または「インポートした DEM」。「平面」と表示されていれば、結果は敷地ではなく平らなデモ用の地面についてのものです。
- 粗い起伏:カタルーニャ以外では、マップの起伏は約30mのデータです。道路は表現されないため、詳細な検討にはDEMをインポートしてください。
- 高さのずれ:モデルに記述された高さと周囲の地盤との差です。IFC側(IfcMapConversion.OrthogonalHeight)で修正する価値があります。
- 壁よりひさしが多い:たいていは、構造モデルなしで意匠モデルだけを読み込んでいます。
- 中庭:それぞれの雨水桝で排水されるものとして扱うため、屋根の雨水は流れ込みません。
- OpenStreetMapが利用できない、または不完全:周辺環境が水路や塀を含まないマップのタイルから作成されたか、要素数の上限で途中までしか読み込めていません。「再生成」で再取得します。
結果の読み方
水の色分けには3つの表示があります。「現在の浸水深」「最大浸水深」(イベント中に各地点で達した最も高い水位)「流速」です。「流線」は水の流れる方向を示します。「表示下限」はしきい値(既定は5cm)より浅い水を隠すため、濡れた舗装が浸水と読み違えられることはありません。
バルセロナのHotel Vela、2mのセル、極端な豪雨、境界は「水が流出」。開始から55分のピーク時に6,772m²が浸水しました。1mを超える最も深い地点は隣の建物の足元の低地で、現地で確認すべき場所です。
画面下部のタイムラインは、1秒あたりシミュレーション時間1分、5分、20分の速さでイベントを再生し、上に降雨、下に浸水面積を表示します。「プローブ」は1地点の値を読み取ります。その瞬間の浸水深と流速、最大浸水深、水の到達時刻、そしてイベント全体の浸水深の推移曲線です。
開始から55分、ピーク時の流速と流線。速い水は、その深さから想像する以上に危険です。
水が到達するドア、スペース、設備
シミュレーションが終わると、ビューアーはモデルのドア、窓、出入口(スロープ、階段、エレベーター)、スペース、設備を、それぞれに隣接する最高水位と比較し、それより低いものを浸水深と水の到達時刻とともに一覧にします。一覧は浸水パネルに表示されるほか、検証パネルにもグループとして表示されます。検証結果やHealth Score(ヘルススコア)には含まれません。
ポブレノウ、1mのセル、閉鎖境界での極端な豪雨:確認した9つの要素のうち1つが、隣接する水位より低い位置にあります。
最低点が屋外の地盤面より下にある要素(地下室、掘り下げた出入口など)は、「地盤面以下」として別に一覧表示されます。これらの数値は屋外に溜まる水の深さで、内部に浸入するかどうかは、シミュレーションでモデル化していない開口部によって決まります。Hotel Velaでは309の要素を確認し、報告されたのは3つで、すべて地盤面以下でした。地下の2つのゾーンと1階のロビーです。
OpenStreetMapの周辺環境がオンなら、水が到達した隣接建物も一覧表示されます。深い順に並び、OpenStreetMapに名称があればその名前も表示され、マップ上では琥珀色から赤の輪郭で示されます。クリックするとその建物へ移動します。
エクスポート
- 凡例、時刻、「参考値」の注記を描き込んだ画像(PNG)。
- イベント全体の動画(約16秒)。すべてのフレームに同じ凡例が入ります。
- グリッド全体のGISファイル:最大浸水深、最大流速、到達時間を、GeoTIFF、ESRI ASCIIグリッド、または浸水セルのCSVで出力します。北が上で、モデルがジオリファレンスされていればその座標系(例:EPSG:25831)を使い、建物はNoDataになります。QGISやArcGISでそのまま開けます。
計算速度
計算1秒あたりのシミュレーション時間
- 250 × 250セル(2m:500 × 500m): 1550×
- 500 × 500セル(2m:1 × 1km): 665×
- 1000 × 1000セル(2m:2 × 2km): 210×
内蔵グラフィックス(AMD Radeon Vega、Ryzen 5 5600H)上のWebGPU、Chrome、2mセルの市街地テストケース。水深が深いと遅くなり、水深1mでは約半分になります。
上のHotel Velaの例(130 × 114セル)は、WebGL2で実時間の約690倍の速さで動作しました。2時間半のイベントを約13秒で計算しています。
ブラウザーの外に出るもの
モデルに関するものは何も出ません。シミュレーションは読み込み済みのデータを読むだけで、結果は端末内に保存されます。マップをオンにすると、タイル、起伏、OpenStreetMapの周辺環境は公開プロバイダーから取得され、一般的なWeb地図と同様に、プロバイダーには対象範囲とIPアドレスが伝わります。マップは最初のリクエストの前に同意を求め、その同意は「マップ → Data and permission」で取り消せます。これらの例の起伏はICGC[icgc-met]、周辺環境はOpenStreetMapのデータです。
浸水結果を共有する前に
- 地形が実データである:デモ用の平面ではなく、マップの起伏かDEMを使っている。
- IFCと地形の高さのずれを把握しており、IFCが誤っていればIFC側で修正した。
- 意匠モデルと一緒に構造モデルを読み込み、1階がひさしではなく壁として読み取られている。
- セルが検討対象に対して十分に細かい:ドアや縁石には1mが必要。
- 降雨を「100年確率の豪雨」ではなく、数値(総雨量、継続時間、ピーク)で示している。 — 再現期間は場所に固有のものです。その場所の降雨統計があって初めて、ミリメートルに換算できます。
- 画像や動画に凡例と「参考値」の注記が入っている。エクスポートでは既定で入ります。
道路の下に埋められた川の近くですか?シミュレーションはOpenStreetMapの旧水路や暗渠を表示し、その上の水を測定します。詳しくは暗渠と浸水リスクをご覧ください。そもそもモデルをマップに配置する方法は、IFCを3Dマップで表示する方法で解説しています。
IFCモデルの内水氾濫シミュレーションをブラウザーで:設定ガイド